さて、また2週間もたってしまいました。お許しください。
滋賀県東近江市立図書館 元館長 巽寛さんによる講演会
「図書館でできること~まちづくり、ひとづくりの拠点 図書館~」(平成23年8月9日(火)午後7時~9時、福知山市民会館31号室)の報告後半です。
「図書館大好きの会」講演会、福知山市民会館31号室がほぼ満席になるほど大勢の方々とごいっしょに、滋賀県東近江市立八日市図書館元館長・巽寛さんのおはなしを伺うことができて幸せでした!メモをとるのも忘れて聴いてました。
「眼施(がんせ)」の大切さを教えていただきました。仏教用語で「優しいまなざしを向けること」だそうです。
会場に飾った黄色いお花は、さとう福知山駅前店店頭での「かあちゃんのまごころ市」で買いました(^^)
市議さん、市職員さんも何人かお越しくださっていました。
私が見つけたのは次のお二人の記事。お二人とも講演会当日~翌日にすぐブログを書いてくださってました!
谷垣和夫さんのブログ「図書館でできること」講演会
高橋まさきの真っ先ブログ「図書館でできること」
今、福知山市では、図書館を核にした「仮称・市民交流プラザふくちやま」の建設計画が凍結されていますが、私は、市民、議会、行政の最大公約数は図書館! と思います。三者が同じ面に立っているとして、プラザをはさんで左右に立てば(対立すれば)、同じデータでも一方からはプラス方向に見えることが他方から はマイナス方向に見えます。
でも、図書館については、おのおのなんとかせんなん、と思っている(と思う)。
それなら、図書館を頂点とする円すいのイメージで、次代への贈り物にもなるような図書館を三者で考えては?と思うのです。
さて、私からの報告。前回の続きです。「8年経過した本は読まれなくなるので、7年サイクルで書籍を更新できるよう予算要求する」ということは、図書館の本が毎年15%くらいずつ入れ替わっていく感じですね。これは大きい!
新図書館オープン時のみ資料を大量購入するのでなく、常に新鮮なものを入れていく・・・生き物を育てるかのようです!
巽さんは、ご講演の始めから終わりまで、「本の力」、「図書館の力」をお話くださったと思います。
図書館の研修などを通じ、有名な経営者の方々の言葉にもふれてこられたようです。
吉本興業の社長、会長、名誉会長を務められたという中邨秀雄(なかむら ひでお)さんが芸人さんたちにお勧めになってる3つのことのうち、第一が「活字に親しむ」だったそうで、それがうれしかったとおっしゃってました。ちなみにあとの2つは、「異業種から学ぶ」「本物を見る(芸術、旅行など)」だったとのこと。
モスバーガーの経営理念への共感も語られました。
その理念とは、
「人間貢献 お客様の幸せづくりに奉仕する
社会貢献 地域社会の幸せづくりに奉仕する」
企業目標は
「食を通じて、人を幸せにすること」
基本方針
私たちのお店は、
― お店全体が善意に満ちあふれ、誰に接しても親切で優しく明るく朗らかで、
キビキビした行動、清潔な店と人柄、そういうお店でありたい。
「心のやすらぎ」「ほのぼのとした暖かさ」を感じていただくために努力しよう。―
という創業の精神を遵守します。
巽さんとしては、
「図書館を通じて、人を幸せにすること」
を目標に、お仕事をされてきたのでしょう。
また、今では日本全国でおなじみの読み聞かせや朝読書の草創期に著された本を2冊ご紹介くださいました。
『読み聞かせ この素晴らしい世界』 (ジム・トレリース著 亀井よし子訳 高文研 1987年)
講演中おっしゃった「四原則」は同書260ページにありました。以下引用です。
「
もともと1960年代初頭にバーモント大学のライマン・C・ハント・ジュニアが提唱したこの「黙読の時間」は、読書問題専門家のロバート・マクラッケン、マーリーン・マクラッケン夫妻から絶大な支持を受けている。いくつもの学校で、さまざまな方法を駆使して実験を重ねたマクラッケン夫妻は、「黙読の時間」プログラムの実行にあたって次のような手順をとることをすすめている。
(1)一定の時間だけ、読ませること。教師や親はそれぞれのクラスや家庭に「黙読の時間」を導入し、子供の熟達に応じて調整すること。教室の場合は、10分ないし15分が望ましい。
(2)読むための素材は子供自身に選ばせること(本、雑誌、新聞など)。その時間内は、ほかの読み物と取り替えないこと。素材はすべて事前に選んでおくこと。
(3)教師や親も、読むことで手本を示すこと。これは何よりも大切なことである。
(4)感想文や記録のたぐいはいっさい求めない。
」 (260-261ページ)
「
ひとりでに本を愛することを覚える子供などというのは、まずいない。誰かが、文字で書かれた言葉の素晴らしい世界へ、彼らを誘い込んでやらなくてはならない。誰かが、その世界へ行く道をおしえてやらなくてはならない。― オリバー・プレスコット『わが子に読み聞かせをする父親』より
」 (104ページ)
もう1冊は、『朝の読書が奇跡を生んだ 毎朝10分、本を読んだ女子高生たち』(船橋学園読書教育研究会編著 高文研 1993年)。
こちらは、上記『読み聞かせ この素晴らしい世界』に感動した先生方が私立船橋学園女子高等学校(現 学校法人船橋学園東葉高校=共学)に導入された「朝の読書」の実践記録です。
「その頃、船橋学園に入学してくる生徒の中には、前に述べたように第一志望に失敗した生徒が多く、「もう自分は人生の敗北者で、生きる希望がない」とまで思いつめている生徒もいた。」(48ページ)そうです。
読書嫌いの生徒たちの朝読書導入当初の声のひとつ。
「・・・私は本を読むということが大嫌いでした。すぐ眠たくなるし、小さな字を見ているといらいらしてくるし、(後略)」(23ページ)
「(前略)“何でこんな役に立たないことをするのだろう”“朝の10分だけの読書なんて意味ないし、自分が読みたいときに読んだ方がためになるのに”“こんなのやるんだったら、朝10分、始まりの時間を遅くしてよ、眠いんだから”って、はっきりいって思いました」(24ページ)
「ところが、こうした生徒たちの声は、(中略)申し合わせたように、逆転するのである。
<・・・この読書の時間は、私に大きな変化をもたらしました。読書をすることによって、漢字が読めるようになったし、文章もすらすら読めるようになったし、(中略)知識も増し、考え方も少しずつ変わってきたように思えます。そして、本の楽しさや、読み終えたあとの感動なども、とても気分がよくなります。自分が少し落ち込んでいるときや、退屈なときには、勇気づけてくれる感じもして、本と言うのはすごい奴だとつくづく思いました。(後略)>」(25ページ)
「<・・・毎日毎日、本を読んでいるうちに、いろいろな漢字や言葉の意味、作者が言っていること、言いたいことなどわかってきて、本を読むことのおもしろさ、楽しさ、大切さなどがわかってきました。そして、いままではマンガ本や雑誌ばかり読んでいたけれど、ちゃんと本というか小説を読むことが多くなりました。疲れているときでも、電車の中でも本を読むようになりました。あと、最近感じたことは、本を読んでるときって、なぜか心が落ち着くなぁー、心がなごやかになるな、ということです>」(27ページ)
こんな具合ですね(^^)
本を読むことによって、考える人、創造する人が増える。他人のことを思いやれるようになる。想像力が育つ。本を読むことによって芽生えるものがあるんですね。本は人を育む。人づくりです。そして人づくりはまちづくり。図書館の果たす役割がそこにあるということです。
目には見えないけれど、大事な役割ですね。
さて、本、というと、文学を思い浮かべがちではないかと思うのですが、このあと、巽さんのお話には、図書館で陶芸の本を借りる人、料理の本を借りる人、写真の本を・・・と、市民一人ひとりの向上心、好奇心に刺激と感動を与えていかれたことが伝わってきました。
図書館は人相手の仕事。相手の知りたいこと、楽しみたいこと、ひとりひとりが生きてゆくことへの支援・・・これら全部「図書館でできること」です。
巽さんからいただいたレジュメに、
「秋吉敏子さんは言った、思いやりのある人、自分の可能性を信じてチャレンジする人が大切
図書館の働きと一致
自己実現すること(幸福の追求)
いいまちづくりを支えるのはどんな人
前向きで、自分だけがよければいいと考えるのではなく、想像力や智恵のある人
図書館を通してまちづくり」
とあります。
秋吉敏子さんは、『国際ジャズ名誉の殿堂』入リを果たした、日本が世界に誇る天才ジャズ・ピアニストでいらっしゃって、彼女がNHKのインタビューに答えて、人を思いやる心、人生の可能性への挑戦、ということをおっしゃっていたそうです。それはそのまま、図書館の仕事であると巽さんはおっしゃいます。
こんなふうに、8月9日、市民会館31号室はほぼ満席、およそ90名の方々とともにお聞きした講演会「図書館でできること」の2時間は、巽さんのお人柄そのままの誠実で穏やかな語り口がとても心地よくて、あっというまでした。
質疑応答の時間を使って、会場のおひとりが巽さんにお礼をおっしゃってくださいました。同時に、お迎えした私たち「図書館大好きの会」の一生懸命のおもてなしの姿勢を認め、言葉にして、会場の皆さまに伝えてくださり、感激しました。
会の仲野さん、上垣さんからの「駅前に図書館がある事例はありますか?」との質問に対しては、そういう事例はあるとのことでした。図書館の入った複合施設などをいくつか挙げて(たしか埼玉県草加市立中央図書館のことなどあげられたのではなかったかと思います)、図書館はもともと人の流れがあるところに立地するのが望ましい、というようにお答えだったと思います。
私自身は、2006年10月20日、西宮市立北口図書館を訪問したことを思い出していました。市保健センターなどといっしょに入っている図書館ということで、当時、(仮称)北近畿の都センター内にできる福知山市立図書館の参考になると思って行ってきました。西宮市立北口図書館は、阪急神戸線西宮北口駅下車、北出口(2階)から通路続きの商業施設「ACTA西宮」東館5階にあります。同館6階には市大学交流センター、西館5階には、市保健センター、市消費生活センターもありました。ACTA西宮は松田平田設計さんの設計だったと思います。
当時、私は骨折上がりの身(足)でしたので、電車を降りてすぐのところに図書館があって本当に助かりました。5階までは、ベビーカーを押す若いお母さんらとエレベーターやエスカレーターで上がりました。
この西宮市立北口図書館の印象が良かったこともあり、図書館が駅前に立地することに疑問を感じていません。
現在計画凍結中の、(仮称)市民交流プラザふくちやま が今後推進されるとしたら、交通の便のよい、まさに一等地に立地するメリットを最大限生かしてほしいと思います。
その他には質問される方がなくて、私は・・・私がしなくてもよいのに・・・今度またいつ巽さんにお目にかかれるかと思うと、質問してしまったんですね.それも5つも。。。m(_ _)m
私の質問その1 八日市図書館は雑誌が充実していた記憶があるのですが、何種類くらい?(あとで見ると当時の私のブログに500種と書いていました)
巽さんのお答え 約600種です。(!)
私の質問その2 図書館開館前15分間は全員でミーティングとのことでしたが、何人くらい束ねておいでだったんですか?
巽さんのお答え 約25人です。臨時職員さん、移動図書館車のドライバーさん、運送業者さんらも含めて。
私の質問その3 図書館にかかる予算は、資料費、人件費などひっくるめて、おいくらくらい?
巽さんのお答え 東近江市の年間予算の1%に当たるくらいです。
(福知山市ホームページによれば、市の平成23年度当初予算規模は一般会計総額396億円とのこと。その1%となると3億9600万円です。今の福知山市立図書館では考えられない数字なのでは?)
私の質問その4 市議会には図書館長が出られることもありますか?
巽さんのお答え あります。
私の質問その5 図書館職員の異動はありますか?
巽さんのお答え 原則ありません。市民に上質のサービスを提供するには、短期間に異動があっては務まらない。図書館専任の職員として採用します。
(福知山市の新図書館も、ここまでしていただけたらありがたいなあ!)
お金の話になったとき、巽さんが微笑みながら、「だいたい本1冊には、今日のような講演会4回分の情報が入っているものなので、東近江市立図書館の貸出冊数(7館合計)117万4千冊(住民一人当たり10.3冊)ということは、400万回以上講演会があった分量に匹敵する」とおっしゃったのが印象的でした。本当に!
質問を終えた直後からもう1つ聞きたかったことがあって・・・それは、「それだけ本の貸出があって、市内の書店から文句が出ませんか?」です。
今日に至るまで伺えていませんが、たぶんお答えは、こうなんじゃないかと想像しています。それは・・・「感謝こそされ、文句は出ません」です。
図書館で本(雑誌)を借りて、読む機会が増えると、借りてすますのでおさまらず、どうしても買い求めたくなる本(雑誌)が出てくるのが人情ですから(^^)
そうして、読む人が増えると、買う人も増えると思うんです。かくして、書店から文句は出ない、むしろ売上が増える場合もある、と。
本を借りる側(市民)にしても、感謝感謝です。
読めばもれなく心の何かが変わります。
図書館は「平等・共有・セルフヘルプを実現する場所」。図書館は市民の「情報への平等なアクセスを確保」くださるはず。*1
「居場所として毎日使え」「万人を迎え入れて、静かに放っておいてくれる」ありがたい存在。*2
買ってまでは読まない本(雑誌)も読めます。狭い家に本があふれることもある程度(笑)防げます。困ったときには図書館に聞けば解決されるかもしれません・・・。
そうか、図書館って、ずっと前からクラウドなんじゃない?!と、敬老の日の夜明けに叫びそうになりながら、本稿を終わります。
巽寛先生、本当に本当にありがとうございました。
いっしょに講演を聴いてくださった皆さん、ありがとうございました。
図書館を良き友とし、読書を通じて、気づき、考え、行動し、発信、交流する人へと、成長していきたいです。
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*講演会とは別に、個人的に読んで参考にし、引用した図書です。
*1
『デンマークのにぎやかな公共図書館-平等・共有・セルフヘルプを実現する場所 』(吉田右子著 新評論 2010年)
*2
『ブックビジネス2.0 - ウェブ時代の新しい本の生態系 』(岡本 真 (著, 編集), 仲俣 暁生 (著, 編集), 津田大介 (著), 橋本大也 (著), 長尾真 (著), 野口祐子 (著), 渡辺智暁 (著), 金正勲 (著) 、実業之日本社 2010年) p.72-75 2008年2月に福知山でご講演いただいた橋本大也さん(両丹日日新聞2008年2月18日付報告記事)が書かれた文
「
家出の逃避先として入った図書館で、私は大検の存在を知りました。 学校をやめても自分の未来が開かれていることを図書館で知ったのです。 行き詰まった人生に新たな選択肢が見つかって明るい気持ちになりました。 居場所として毎日使えたこともありがたかったです。万人を迎え入れて、 静かに放っておいてくれる図書館の存在は、当時行き場のない私にとって どんなに大きかったことか、いまあらためて思います。 (中略)私は公共性の意義とは、そうしたマイノリティの弱者を救済することだと思うのです。(中略) 膨大な蔵書の質量や管理された静謐な空間を見せつけることで、子供たちに知の世界の奥行きや豊かさを感じさせる教育の場としても、図書館は価値があると思います。(中略) 私が求めた公共図書館の機能は、欧米におけるキリスト教の教会の機能に似ているのかもしれません。図書館に神はいませんが、情報による救いと癒しの場として、地域コミュニティの場として、今後も図書館には頑張ってほしいなと考えます。
」
よろしければ下記もお目通しください。(私のブログ Kyoko of Today より)
東近江市立八日市図書館見学記 1
東近江市立八日市図書館見学記 2
福知山市立図書館指標比較(福知山YMCAブッククラブ堀京子作成)
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